「死」を子どもに教える

「死」を子どもに教える (中公新書ラクレ)

「死」を子どもに教える (中公新書ラクレ)

最近、毎日のように自殺したとかいじめがあったとかニュースになる。そんな背景を思って買った本。死を取り上げることがタブー化している教育現場において、積極的に生と死を教える先生の取り組みをこの本では紹介している。死への準備教育:デス・エデュケーションと呼ばれる取り組み。
死を教えると簡単に言っても、大人ですら死を乗り越えるのに1ヶ月で済んだり数年、場合によっては生涯引きずるほどの感性の違いがあるのだから、多感な子どもに心のキズが残らないよう細心の注意が払われる。この本で紹介されている天野教師の例で言えば、1年目に性教育、2年目にペットの死、そして3年目にガン患者を講師に呼んでの講話や終末医療に携わった体験談などを通して人の生と死を取り上げる。これらは段階的に、かつ一貫性を持って行われる。生徒の意見としては、最初のアンケートでは「死なんて怖いテーマをやりたくない」と言っていても最終的には「やってよかった」「なぜ自殺するのだろう、と考えると悲しくなる」など概ね好意的に取られている。
このデス・エデュケーションはあまり広がってはいないのが現状。これらは非常に時間が掛かり大変で、こう教えればよいというマニュアルがない。「あなたは死をどう捉えますか」という問いの答えは生徒の数だけ存在するし、場合によっては答えがないかもしれない。「これが正解」というものもなく、場合によっては先生が「わからない」と答える勇気が必要になる。教えるというよりは一緒に考えるというスタンスの、他の授業とは全く異質な教育であることがハードルになっているようだ。
ここからは私の意見。難しいのは分かるが、この教育はやるべき。最近ではなにかあるとアンケートだ調査だと対症療法的対処になっている。これを予防するための教育を真剣に考える時期に来ているのだと思う。なんの心の準備もなく、ある日突然起こった「クラスメイトの死」を題材に死を考えるなんて悲しすぎるとは思いませんか。