南の島のティオ

南の島のティオ (文春文庫)

南の島のティオ (文春文庫)

舞台は南海に浮かぶ小さな島。海は透きとおり珊瑚礁に覆われ、島のシンボルであるクランポク山が街を見下ろす。飛行機の定期便が観光客や政府の人を乗せてくるが、リゾート地というほどでもない。主人公である少年ティオは、父がホテルを経営しており、島の外から来た人から珍しい話をよく耳にする。ぬかるむ道路が舗装されたり、カヌーがモーターボートに代わったりと少しずつ現代化していくこの島でも、科学ではうまく説明できない不思議な出来事がたまにおこったりする。ティオが語る10の短編物語集。
情景が非常によく描かれていて、すんなり島のイメージが想像でき、物語の世界観にスッと入っていけます。南国のゆったりとした世界に浸れます。受け取る人が必ず訪れてくれるという不思議な絵はがきを作る絵ハガキ屋さんや、船にいたずらをする空いっぱいの大きなウミガメなど、不思議な出来事が起こります。でも、こんな島ならもしかしたら起こるかも?と思わせるようなところがまた不思議なわけで。「それはきっと島の精霊のせいじゃな」と本気で言える人がいない現代風な私たちではなかなか味わえない感覚なのかもしれません。