中学受験の失敗学

中学受験の失敗学 (光文社新書)

中学受験の失敗学 (光文社新書)

最近の受験のニュースで、校門前に塾講師らしき人々が文字通りゲートを作っている光景を見てなんか異様…と思っていた頃に見つけた本。
中学受験が高校・大学受験と違う点は、生徒がまだはっきりとした意思表示が出来る年齢ではないため親が暴走しがちなところ。親が無茶苦茶言っても、子供はそれがきっと正しいのだろうと信じ受け入れてしまう。そんな暴走が続いた結果、複数受けた受験校が全滅したというような実例を交えながら受験とどのように向かい合うべきかを書かれている。現場の実態を知る現役家庭教師が著者。
中学受験に失敗する大きな要因は「勉強の詰め込みすぎ」にあるという。余裕のないスケジュールを組むと、復習の時間が取れなかったり疲労が溜まったりして知識の消化不良が起こる。成績が伸びないから塾のコマ数を増やしたり家庭教師を増やす→さらに余裕が無くなり成績が上がらない、という悪循環に陥る。ここで親が陥る論理は「投資額が大きければ大きいほど成績が伸びる」もちろん少し考えればこんな論理は成立しないのは簡単に気づくが、焦りと不安に駆られた親はそれが真実と信じる。一方、塾からしてみれば教育であると同時に利益追求のための営業でもあるので、必要ない・逆効果と思ってもウチの授業を増やして欲しいと訴えるのである。というような受験産業に対する切り口もこの本では語っている。
最近になって再び受験ブームが到来したというのは、ゆとり教育からの反動や不況という影響もあるけれど、「勝ち組・負け組」という考え方が広まったためだという論は面白いと思った。昔はエリートになるためには有名校に進まなくてはならないという動機から受験戦争になったが、今は「負け組」にならないように有名校に進ませたいという、消極的エリート意識からの受験戦争になっているのだという。うーん、確かにマスコミは無駄に勝ち負けを煽りすぎだとは思っていたけれど、こういう形で影響が出るもんなんですね。そしてそれを食い物にする塾や私立学校といった企業というのもしたたかというか。
それなりに面白いとは思った。今がタイムリーなお話ってことで。