大学病院のウラは墓場

大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す (幻冬舎新書)

大学病院のウラは墓場―医学部が患者を殺す (幻冬舎新書)

本の帯に「医者は、自分が病気になっても大学病院だけは入りたくない」なんて挑発的な文句が書かれていて思わず買った本。
普通の人が思う大学病院というと、設備が揃って医者も多く、高度な医療を受けられる万能の病院というようなイメージを抱いてしまいがち。しかし大学病院というのはその性格上、普通の病院とは違う面も持っているのです。
大学病院の担う役割は3つ。それは研究、教育、診療。そもそも大学病院の医者というのは研究者に近いため、研究分野で高名な教授でも実際の手術では現場の医師に及ばないこともしばしばあるとか。研究のためのデータとして、こっそりとある診療を行うグループと行わないグループに分けたりする実験もしているらしい。診療という点では、それら研究や論文作成の片手間にされてしまう。教育といえば医学生・研修医の存在。簡単な病気や怪我で大学病院に行けば、研修医の練習台になるのでしょう。もちろんベテランの指導の下でミスもほとんど無いとはいえ、患者の立場ならやはり研修医には当たりたくないのが心情というもの。これらの内部事情を知っている医者ならば大学病院に掛かりたくないというのも納得です。
このような内部事情が医者でもある著者によって暴露されている本。ただ、あくまで暴露本という感じであって、内部批判という色は薄い印象でした。医者の声が多く載せているし、どちらかというと医者側の立場で書かれています。良くも悪くも医者や医学界の問題点みたいなものは見えてくる本。