右翼と左翼

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

右翼と左翼 (幻冬舎新書)

最近のニュースを見ていると頻繁に出てくる右翼と左翼。しかしどうにもわかりにくい。右翼:保守・権力・民族・軍備、左翼:革新・反体制・市民・平和、という概念的なものは分かるのです。しかし、郵政民営化という保守勢力にメスを入れた小泉さんは右翼と言われるし、中韓での反日活動のような民族主義は左翼と言われる。そんな漠然とした疑問を解消してくれた本でした。
右翼と左翼の起源はフランス革命。王侯貴族の権力が失墜し、ついに開かれた議会で王に拒否権を与えるべしとした穏健派の勢力が議長から見て右に、拒否権を廃し市民による政治を行うべしとした革新派の勢力が左に座ったのが始まりなのだそうです。そんな雑学的な知識から始まり、絶対王政自由主義・民主主義・社会的民主主義・共産主義と右翼と左翼のたどってきた歴史が紹介されています。日本についても戦前・戦後・現代と3章に渡り多くのページ数を割いています。
現代の日本では右翼も左翼も失われつつあるのだそうです。右翼も天皇に権力を戻し議会を否定する主張をするわけでもないし、左翼も共産主義を謳ってソ連のようになることを主張するわけでもない。一部のそういうことを主張する勢力は今までの右翼・左翼とは違い、ウヨとサヨとして軽蔑の対象となっています。実現性のある魅力的な国家像を示せないためでしょう。特にソ連崩壊から共産主義に代わる理想像を見いだせないでいる左翼勢力の崩壊は著しく、それが相対的な右傾化として最近の「右傾化」という現象の一因であると述べられています。
気になる著者の政治的右左姿勢はあくまで中立。ここは相当気を使ったのでしょう。一つのテーマに沿って書かれた生きた歴史書として世界史・日本史・現代社会の分野を眺めることが出来るこの本はなかなかにオススメです。★4つ。