星の王子さま

星の王子さま (集英社文庫)

星の王子さま (集英社文庫)

いつしか子どもの頃の純真な心を忘れてしまった「僕」は、不時着した砂漠の真ん中で「王子さま」と出会う。「すみません、ヒツジの絵を描いて」という不思議なお願いから彼のお話は始まる。彼は一つの家より少し大きいくらいの小さな星に一人で住み、たった一つのバラの花をとても大切にしていたらしい。彼の大切にしていたもの―バラや夕日や星空や彼の住処―の話を聴くうちに、自分にとって本当に大切なものは何かを思い出すことになる―。
新書・実用書ばかり読んでいる私にとって、物語というジャンルを読み始めるには最適な本でした。213ページという文章は軽くてとても読みやすく、私は実質2日で読み終わりました。文章は簡潔ですが、よくよく読んでみると結構深い。児童文学のような色合いを残しつつも、ターゲットは案外大人向けの読み物のように感じました。
私のとても好きだったくだりを一部引用して紹介。

大人は数字が好きだ。新しい友達が出来たよと言っても、大人は大事なことは何も聞かない。「どんな声の子?」とか、「どんな遊びが好き?」とか、「チョウチョを収集する子?」などとは聞かない。聞くのは「その子はいくつ?」とか、「兄弟は何人?」とか、「体重は?」とか、「お父さんの収入は?」などということばかりだ。こういう数字を知っただけで、大人はその子をすっかり知ったつもりになる。だから「バラ色の煉瓦で出来ていて、窓にジェラニウムの花があって、屋根にハトがいるきれいな家を見たよ」と言っても、それがどんな家なのか想像できない。「10万フランの家を見たよ」というとようやく、「そりゃすごい家だね」と感心するのだ。

子どもの頃ってそういう視点でものを見ているんですよね。大人になると大事なものが見えなくなるわけだ。というわけで、さすがに名著と言われるだけのことはありました。★5つ。